記事公開日
PPA事業者のO&M ~施設屋根の安全、あんしんのためのスマート保安~

PPA事業では、発電量を維持しながらO&Mコストを抑えることに加え、設備を設置する施設屋根の安全を守ることが欠かせません。この2つを両立する考え方として注目されているのが、IoTを活用したスマート保安です。
再生可能エネルギーを主力電源へ
日本は2050年カーボンニュートラルの実現を目指しています。2025年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画では、2040年度の電源構成に占める再生可能エネルギーの割合を4~5割程度、うち太陽光発電を23~29%程度とする見通しが示されました。
また、太陽光発電協会(JPEA)が2024年に公表した「PV OUTLOOK 2050」では、2050年の太陽光発電導入見通しを400GWACとしています。旧記事公開時の300GWから引き上げられており、太陽光発電には一層の普及拡大が期待されています。

企業においても、RE100への参加やSDGsへの取り組み、ESGを重視した経営などを背景に、再生可能エネルギーを調達する動きが広がっています。
参考:第7次エネルギー基本計画(資源エネルギー庁)
参考:PV OUTLOOK 2050(2024年版ver.1)(太陽光発電協会)
国内外で注目を集める太陽光発電のPPAモデル
再生可能エネルギーの導入方法として普及しているのが、太陽光発電のPPAモデルです。PPA事業者が発電設備を保有し、需要家と電力購入契約(Power Purchase Agreement)を結んで、発電した電気を供給します。

なかでもオンサイトPPAでは、需要家の施設屋根などに発電設備を設置します。需要家は初期の設備投資を抑えて再生可能エネルギーを導入でき、PPA事業者は契約期間中の電力販売によって設備費用を回収します。
導入しやすさがメリットである一方、PPA事業者には、契約期間を通じて発電設備を安定稼働させる責任があります。そのため事業計画では、発電量だけでなく、O&Mコストと保安リスクをあわせて考える必要があります。
課題1 LCOEの低減

PPAは、PPA事業者が設置した太陽光発電設備の費用を、需要家との電力購入契約によって回収していくビジネスモデルです。当初の計画どおりに回収できるかどうかには、設備の稼働状況だけでなく、契約期間中のランニングコストも大きく影響します。
太陽光パネルが故障すれば発電量が低下し、交換が必要になれば部材費や作業費も発生します。こうした事業性を評価する指標の一つが、LCOE(Levelized Cost of Electricity:均等化発電原価)です。
LCOEは、EPC(設計・調達・建設)からO&M(運用・保守)、廃棄までの総コストを、生涯発電量で割って算出します。PPA事業のLCOEを低減するには、初期費用だけでなく、故障による発電損失や交換費用を抑え、O&Mを効率化する視点が欠かせません。
課題2 保安リスクマネジメント

オンサイトPPAでは、PPA事業者の設備を需要家が所有する施設の屋根に設置します。そのため、太陽光発電設備が建物や施設の運営に影響を及ぼさないよう、十分な保安管理が必要です。
設備の不具合によって屋根や建物を損傷させたり、焼損事故につながったりすれば、復旧費用だけでなく、施設の操業やPPA事業者の信用にも大きな影響が及びます。万が一、人的被害につながれば、その影響はさらに深刻です。
野立ての太陽光発電所とは異なり、施設屋根では建物所有者の資産と事業活動がすぐ近くにあります。PPA事業では、発電量の管理と同じように、保安面のリスクマネジメントを事業計画に組み込むことが重要です。
スマート保安がPPA事業性向上のカギ
「O&Mコストの低減」と「保安リスクマネジメント」。この2つの課題を両立するためのカギとなるのが、IoT技術を活用したスマート保安です。

重要な考え方の一つが、TBM(Time Based Maintenance:時間基準保全)からCBM(Condition Based Maintenance:状態基準保全)への転換です。
TBMは、一定の時間間隔で点検やメンテナンスを行う方法です。一方のCBMは、設備の状態を継続的に把握し、必要と判断した時点で点検や補修を行います。設備の異常兆候を早く捉えられれば、故障の深刻化を防ぎながら、不要な部品交換や現地作業を減らせる可能性があります。
ただし、スマート保安は現地点検をなくすものではありません。遠隔監視で設備状態を把握し、異常が疑われる箇所へ人員と時間を重点的に配分することで、限られた保安人材でも点検の質と効率を高める取り組みです。
PPAのスマート保安を支えるPV遠隔安全診断システム
アイテスは、住宅屋根や事業用施設屋根に設置する太陽光発電設備の安全性向上と、保守点検の省力化を目指し、「PV遠隔安全診断システム SoT(そっと、)」の開発を進めています。

このシステムは、ソラメンテで培ったセンシング技術と太陽電池の故障解析技術に、IoT・クラウド・通信技術を組み合わせたものです。太陽光発電設備の直流部に定置型機器を設置し、夜間に太陽電池ストリング単位で、対地間の絶縁性能、バイパス回路の健全性、セルストリング回路の健全性を自動測定します。
測定データはクラウドへ送信され、気象データとあわせて設備の健全性を診断します。異常箇所やその傾向を遠隔から把握し、必要なときに保守点検者が早期対応できるようにすることで、事故の予防とO&Mの効率化を両立させる考え方です。
本システムは東北電力株式会社との共同開発が進められ、2025年には第70回澁澤賞を受賞しました。現在も製品化に向けた取り組みが続けられています。
詳しくは、PV遠隔安全診断システム SoT(そっと、)および澁澤賞受賞のお知らせをご覧下さい。
PPA事業の長期安定運用には、発電量、O&Mコスト、施設屋根の安全を一体で考えることが大切です。新規案件の保安設計や既設設備の点検方法でお困りの際は、ソラメンテへお問い合わせ下さい。

