今回は、バイパス回路 開放(オープン)故障の解説と特定方法についてご説明します。
バイパス回路の開放故障は、目視で確認しただけでは分かりません。また、発電量もほとんど変化しないので、気付くのが難しい故障です。
しかし、この故障を放置すると発熱やバックシートの焼損など、危険な状態になる可能性があります。そのため、バイパス回路の健全性を定期的にチェックすることが重要です。
太陽電池モジュールの回路構造をおさらい
図1
太陽電池パネルは2つの回路でできています(図1)。
1つ目は、太陽光で発電するセルを直列に接続した「セルストリング回路」です。2つ目は、セルストリング回路に障害が発生したときに、発電電流を迂回させる「バイパス回路」です。
セルストリング回路とバイパス回路は並列に接続されています。この塊のことを「クラスタ」と呼びます。
市場で多く使われている標準的な結晶系の太陽電池パネルは、3つのクラスタで構成されています。
バイパス回路には、バイパスダイオードが取り付けられています(図2)。ダイオードには電気の流れを一方方向にし、逆流を防ぐ役目があります(整流作用)。
ダイオードはA(アノード)→K(カソード)に電流が流れますが、K→Aには流れません。また、AよりKの電圧が高ければA→Kに電流は流れません。
部分影や故障がなく通常の発電状態であれば、AよりKの電圧が高くなるので、バイパスダイオードには電流が流れずセルストリング回路に電流が流れます。
バイパス回路の開放(オープン)故障とは
それでは本題に移って、バイパス回路の開放(オープン)故障とはどのような状態なのか見ていきましょう。
バイパス回路が開放(オープン)故障している状態を図3で示します。このように発電電流の迂回路(バイパスルート)が無くなります。
なお、図4のように、完全な開放までには至らず、バイパス回路が高抵抗化していることもあります。
開放故障による発電損失と火災事故のリスク
図5のように、バイパス回路オープン故障があるセルに部分影がかかると、迂回路がなくなっているため、そのストリング全体の発電電流が止まってしまうことがあります。そうなると発電量(売電収入)の大きな損失となります。
また、何より怖いのが図6のように、バイパス回路の開放故障とセルストリング回路の高抵抗化が併発するケースです。異常発熱した高抵抗化部分の周辺に、枯草等の可燃物があると発火に繋がる恐れがあります(写真1)。
開放故障の特定方法
前項のような売電損失や発火事故を防ぐためには、バイパス回路の健全性を定期的にチェックすることが重要です。そのための、バイパス回路の開放故障を特定する方法をご紹介します。
必要な道具
以下の道具があればOKです。
- バイパスダイオードテスタ
- ソラメンテ-iSまたはeソラメンテ(電流センサー)
- 遮光シート
特定の手順
バイパス回路の状態を確認
ストリング毎の、バイパス回路の状態を確認します。
- 回路をパワコンから切り離し(開放状態にし)ます。
- バイパスダイオードテスタを使用し、ストリング回路のPN端子から測定します。
- バイパス回路が開放状態になっている、太陽電池パネルの有無を判定します。
故障パネルの特定
バイパス回路が開放故障しているストリングで、故障パネルを特定します。
- 該当のストリング回路を、パワコンと接続します(動作状態)。
- 次に、正常に動作している太陽電池パネルを見つけます。
遮光シートで太陽電池セルを遮光し、ソラメンテ-iSをバスバー電極にあてます。バイパス回路が正常に動作しているパネルは発電電流が迂回しているので、ソラメンテ-iSは反応しません。これが正常に動作しているパネルです(図7)。
- 遮光シートを外し、2で正常と判定したクラスタのバスバー電極に、ソラメンテ-iSを固定します(図8)。この時のソラメンテ-iSは発電電流に反応し、音とインジケータが光ります。
- 遮光シートで他のクラスタのセルを4枚分ほど覆います。
- クラスタごとに順番に遮光して、ソラメンテ-iSの反応を確認します。
- 正常であれば遮光シートによって発電電流は迂回するため、ソラメンテ-iSは反応します(図9)。
- バイパス回路がオープンになっていると、遮光シートによって発電電流が止まり、そのクラスタの発電が止まり、バイパス回路に迂回することもできないため、ストリング全体の発電電流が停止します。それにより、ソラメンテ-iSの反応がなくなります(図10)。
- 上記7の状態となったとき遮光シートで覆っているパネルが、バイパス回路が開放故障しているパネルです。
最後に
2021年現在、FIT価格の低下、野立て適地の減少により、施設屋根や住宅屋根へ太陽光発電システムを設置するケースが増加傾向にあります。
今回ご説明しましたバイパス回路の開放故障は、発電損失や安全面においてハイリスクな故障です。少なくとも定期点検の際にはバイパス回路の健全性もしっかりと確認し、もし故障を特定したならば早急に交換を行うようにしましょう。
また、アイテスでは、バイパス回路の健全性を常時遠隔で診断するシステムを開発中です。
このシステムにより、軽微な段階から故障に気づくことができ、しかも故障モードに応じた適切な現場対応を行うことが可能になります。
今後PPA事業やVPPによる分散広域活用における太陽光発電設備の保安において、このような遠隔安全診断システムの活用を検討してはいかがでしょうか?
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PV遠隔安全診断システム SoT (そっと、)
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