発電するパネル、しないパネルの見分け方 ~電気主任技術者による故障パネル点検の実際~

電気主任技術者が行う保守点検は交流設備だけ?2017年4月施行の改正FIT法で義務化される保守点検では、直流側のパネル点検も対象となるとされています。このパネル点検をいち早く取り入れ、発電出力の正常化に貢献している電気主任技術者の先進事例を現場から報告します。


2016年師走。九州にある太陽光発電所の年次点検に立ち会いました。現場は、リアルコム様が管理している発電所。リアルコム様はIT事業を本業としながら太陽光発電関連ビジネスを全国各地で広く手がけている企業です。自社発電所等の管理実績とIT技術を生かし、遠隔監視システムECO Smart View(エコスマートビュー)を開発、全国に合計2GW以上の発電所に導入実績があります。アイテスO&Mセミナーにご参加いただいた同社の発電所運営管理者である川口様は、自社発電所等に「ソラメンテ点検」を導入され、電気主任技術者の河内電気管理事務所様に委託されています。河内電気管理事務所様は直流側である太陽光パネル点検に特に力を入れておられる経験豊富なソラメンテユーザーです。今回のレポートでは、故障パネルを短時間で特定し復旧まで行う電気主任技術者の先進事例をご紹介します。

電気主任技術者:河内電気管理事務所(九州電気管理技術者協会所属)
EPC:WWB株式会社
O&M:リアルコム株式会社 川崎第一第二太陽光発電所
発電所:福岡川崎発電所(第一、第二)

※河内様はソラメンテユーザーレポート④でもご紹介していますのでご参照ください。
4.河内電気管理事務所様【鹿児島県】

現場の状況

現場に到着。まずは事前準備のため発電所の状況確認を行います。しっかりとコンクリートで基礎固めをされておりパネルも整然と並んでいる非常にきれいな発電所です。

発電所規模は第一、第二合わせて1MW。作業は河内様と同じく電気主任技術者の小吹様の2名で実施されています。点検当日の天候は晴れ時々曇り。下記の写真のように雲の流れが速く日照変動が激しいパネル点検には難しい条件となりました。

ストリング点検

(ソラメンテ-Z 開放電圧、インピーダンス抵抗)

雲が速く動き日照が変動する

まずは接続箱からソラメンテ-Zでのストリング点検を行います。日照変動の影響で、開放電圧は大きく動くなか、ソラメンテ-Zのインピーダンス抵抗値は19Ω~23Ωとほぼ安定して推移。2人作業で安全確認をしながらテキパキと作業を進められます。ソラメンテ-Zの測定結果は本体メモリーに記憶されるため転記の必要が無く効率的に作業できます。

2人作業。13ストリング/接続箱

1MWのストリングすべてをソラメンテ-Zで測定し、1ヶ所のストリングでOL(インピーダンスの高抵抗を意味する)を検出しました。今回、異常と判定されたのは1ストリングのみでしたが、この系列に故障パネルが存在するはずです。1MW発電所のソラメンテ-Z点検に要した時間は2人作業で約2時間でした。

ソラメンテによるストリング点検

正常な回路は 
開放電圧: 790~810V
インピーダンス:19~23Ω
※1回路にインピーダンス高抵抗を検出したソラメンテ-Zの表示では「OL」と表示される

ストリングのパネル配置確認作業
(ソラメンテ-iS)

次に異常とされるストリングから故障パネルを特定する作業をします。まず、該当ストリングの14直のパネルがどこに配置されているかをソラメンテ-iSで探索します。該当ストリングのみを通電させ、想定されるアレイのパネルを表面スキャンし、発電電流の有無を確認すれば14パネルの配置がわかります。

①該当のストリングのみ通電させる
該当ストリングのパネル14枚を特定
②ソラメンテで反応するパネルを探索

このパネル配置確認作業は、ストリングマップ(パネル配置図面)が無かったり、配置図と実際の結線がちがっていたりしている場合に、便利な方法として使われます。PVケーブルを外したりケーブルを辿ったりすること無く、効率よくパネル配置を確認できるのです。

故障パネルの特定 (ソラメンテ-iS)

パネル14枚の位置を確認後、その中からクラスタ故障パネルを探索します。ソラメンテ-iSのセンサーヘッドをパネル表面のバスバー電極を横切るように動かし、発電電流の反応がないクラスタを探します。1枚のパネル点検に要する時間は約5秒。14枚すべてを確認し3クラスタのうち上部1クラスタが反応しないパネルを発見しました。この故障クラスタはバイパスされているはずです。河内様は手際よくクラスタ故障パネルに白色のビニールテープでマーキングを行いました。

ストリングパネル配置確認作業および故障パネル特定に要した時間は約10分でした。

バイパスダイオードの発熱状態を確認
(サーモカメラ)

次に、バイパスダイオードの状態を確認するため、裏面のジャンクションボックスをサーモカメラでチェックします。クラスタ故障パネルは、バイパスダイオード側へ電流が迂回し発熱を伴っているので、正常なパネルと比較し約10度の温度差があるはずです。河内様はサーモカメラでの作業は必ず裏面から行うようにしているとのこと。パネル表面からではガラス表面の輻射熱や反射により、本来確認したいパネル内部のセルやバイパスダイオードの温度差分布を確認することは難しいためです。

故障パネルの交換 

今回のリアルコム様の管理現場ではストックパネルが準備されていたこともあり、故障パネル特定の後、河内様の監督の下でパネル交換が行われました。電気主任技術者の職務は電気事業法により「電気工作物の保安の監督であり、具体的には、保安教育、工事計画の立案及び実施、電気工作物の保守、災害対策」とされています。点検作業を行うだけでなく、その後の対策までを監督することで、発電量の健全な維持管理と安全確保が実現できます。

そして最後の確認も忘れません。パネル交換後に該当ストリングをソラメンテ-Zでインピーダンス測定し抵抗値が正常な状態にもどっていることを確認します。

今回の点検では、クラスタ故障パネル1枚と目視点検によるガラス割れを1枚が特定され、合計2枚の故障パネルの即日交換となりました。リアルコム様は、豊富な発電所の管理とEPC/O&M事業の経験から、稼働後の現場でのメンテナンス即応体制を重視されており、今回のような故障パネルに即対応できるよう交換用のストックパネルを常に準備されています。1MWクラスの現場では数枚~数十枚の故障パネルが検出されるケースもありますが、今回の点検結果は比較的状態が良いといえます。発電事業者、EPC、メンテナンスを委託されている電気主任技術者の各々が、パネル点検の重要性を認識し今回の事例のような対応を行うことで、長期的な安全管理と発電量の維持管理がしっかりと実現されること、を実感しました。

ソラメンテの点検講習

今回点検を実施された河内様の太陽光パネル点検の評価は高く、九州だけでなく全国からもその実績を耳にした関係者からの問合せがあるとのこと。今回も、太陽光パネル点検を見学する目的で、ほかの地域から電気主任技術者の方2名が来られていました。河内様は、太陽光パネルの構造から始まり、ソラメンテでのパネル点検方法について、わかりやすく丁寧なレクチャーをされていました。


終わりに

50KW以上2MWまでの太陽光発電所は電気主任技術者の選任が義務付けられています。電気主任技術者が行う保守点検は交流設備だけと思われている発電事業者やEPC関係者も多いと思いますが、最近では河内様のように直流側のパネル点検までカバーしている電気主任技術者も全国で徐々に増えてきました。2017年4月に施行される改正FIT法では保守点検の義務化が予定されており、直流側のパネル点検についてもその範疇に入るとされています。

従来の交流側点検に加えて直流側のパネル点検までを責任範囲とし、電気設備の保安監督を行う河内様のような電気主任技術者のニーズは、今後ますます高くなると思われます。発電事業者であるリアルコム様は、九州で稼動している複数の太陽光発電所について、河内様にソラメンテ点検の委託を予定されています。

太陽光発電所の発電を担うのは太陽光パネル、その発電出力を健全に保つにはパネル点検が欠かせません。発電事業者だけでなく、電気主任技術者の皆様にもパネル点検の重要性を再認識していただき、高効率なパネル点検ができる電気主任技術者による太陽光パネル点検が普及することで、クリーンエネルギーの安定供給の確保に寄与できること、を願っております。

今回は、WWB株式会社様、リアルコム株式会社様、河内電気管理事務所様のご協力をいただき取材しました。ありがとうございました。


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