スネイルトレイルとは?


2014/1/23


スネイルトレイルとは?

噂のスネイルトレイルとは?

スネイルトレイル(Snail Trail or Snail Track) といわれる模様は、セルの微小クラックが設置後の温湿度や通電ストレスによる化学反応で成長したものといわれています。クラックを内在したパネルは、早いもので設置後3 か月ほどからクラックの亀裂痕どおりの黒い模様を表面化させ、さらに模様は白色化していきます。成長し顕在化したクラックは、そのズレたエリアが離脱し発電に寄与しなくなり、出力低下や部分発熱を招くといわれています。クラックを内在したパネルは、その程度によりますが、工場出荷時に出力が正常でも、稼働開始後の継時変化で出力や安全性の問題を発生させる可能性があります。その兆候を目で確認できるのがスネイルトレイルなのです。

スネイルトレイルは氷山の一角?

稼働中のパネル表面を今一度見てみませんか?スネイルトレイルらしきものがないでしょうか?もし見つかった場合、それは可視レベルに顕在化したものであり、ほかにも潜在している可能性も否定できません。スネイルトレイルは目視できる現象であり、ガラスの下でクラックによる発電低下となる不具合が発生していても顕在化していないものもあります。

太陽電池は壊れない?

結晶系ソーラーパネルの発電素子であるセルは、シリコン半導体でつくられていることから、長寿命で故障知らず、と思われています。安定した動作環境にある半導体デバイス(IC チップ)のイメージがあるからでしょうか。

 

一方、太陽エネルギーを吸収し発電する機能を果たすソーラーパネルは、365 日屋外の過酷な環境下で、温湿度変化、風雨などの物理的ストレスを受け続けています。最大限に受光面積を確保したセルは、約15cm 角、厚さわずか200um 程度のシリコン板、セルの端をつまみ上げると自重でパリン!とわれるぐらいもろいものです。このセルを60 ~ 72 枚程度直列に配線し、樹脂で固め、表面に強化ガラスを装着してフレーム化したもの、をソーラーパネル(モジュール)と呼びます。この構造から、製造工程を含めたセルクラック発生や、その成長の可能性は否定できません。

 

パネル入荷時点では、ガラスで覆われた外観からはセルクラックを見るすべはありませんが、稼働後のスネイルトレイル現象が、それを知らせてくれています。

ソーラーパネルはどんな故障が多い?その対応は?

出力低下を招くソーラーパネル故障の原因系としては、セル間の配線接続をするはんだ部の剥離、セルクラックによる部分的な発電電流の遮断、樹脂(EVA) やバックシートなど構造材の劣化、などに分けることができます。いずれも、屋外環境ストレスによる経年変化で顕在化すると考えられますが、その発生割合は製造工程品質や材料により大きく異なります。

 

最近のパネル供給不足と価格低下要求の現状から、工程や材料品質より生産量やコスト削減を優先した、ばらつきの大きいパネルを入手してしまうことが想定されます。設置してからの故障パネル特定は、はんだ剥離がパネル出力の1/3 を失うクラスタ断線のようなはっきりした断線系故障は対応できますが、出力減衰するクラックや材料劣化による故障の特定は、現状では効率的な手段がなく難しい作業となります。

 

また、これらが工程や出荷検査で見つかる可能性は、検査レベルにもよりますが、はんだ接続や材料の不具合については、明らかなものを除いてきわめて低いと思います。

ただ、セルクラックについては、EL 画像検査手法によってクラックの存在とその程度を把握することができます。パネルに内在するクラックは、EL 画像検査で事前に検出することができるということです。

 



EL 画像で見るセルクラック

クラックはEL画像検査で見える

スネイルトレイルの起因となる潜在的なクラックを発見する方法はないでしょうか?

 

実は、クラックは微小なものも含め、EL(Electro-Luminescence) 画像によりまるでレントゲンを撮ったようにくっきりと写しだすことができるのです。EL 画像検査は、太陽電池の解析評価や欠陥検出に使われ、パネル生産において工程検査や出荷検査に標準的に適用されているイメージング技術ですが、パネルメーカーにより対応は異なり、その頻度や検査レベルは定まっていません。

EL画像検査の原理

太陽電池は光を吸収して発電するので、逆に通電すると発光します。この光を撮像する方法をEL 観測と いい、近赤外波長のEL 微弱発光を観測します。

 

この発光強度は発電層の良否と相関があり、欠陥があれば発光現象に差が出ることを利用して、暗部となる電極の不良や、クラックなどの発電層の欠陥を検出することができます。

スネイルトレイルをEL画像で見ると

スネイルトレイルが発生し取り外された複数のパネルをPVX300(アイテス社製)EL 画像検査装置で撮像し、実在するクラックとの位置相関を検証したところ、例外なくスネイルトレイル軌跡と同じクラック線が写しだされました。

 

最近の技術報告(ドイツ) では、稼働後にパネル裏面から侵入した水分が、温湿度や通電のストレスサイクルによりクラック内でソーラーセル上の銀電極と化学反応を起こし、銀の粒子が流出することでクラック痕上を黒く変色させている、という分析結果を報告しています。今回のパネルも、おそらく入荷時点で因子となるクラックがセル内に複数存在しそれが繋がり、またはそのままの形で表面変色として顕在化したものと思われます。

現在アイテスでは、サンプルパネルを自社環境試験設備で加速ストレス試験を開始、まだ不明な点が多いスネイルトレイルの発生メカニズムの解明に着手しました。まずはクラックが出力低下に直結するのかを検証、次にスネイルトレイルへの成長をシュミレーションする予定です。

 

余談ですが、今回のパネル一枚の表面を意図的に均一に踏みつけ、その前後をEL 撮像した結果、一部のセルでクラックが発生しました。施工時にあり得るだろう、パネル表面の歩行による物理的ストレスで、極微小クラックを持つセルが反応したと思われます。逆に、ほとんどのセルでは踏みつけ前後の画像変化は見られず、クラック因子のないセルは外部押圧にも強いだろうことが言える、との見解です。設置現場では、パネルの強化ガラスの上を歩くことがあるかもしれません。クラックはいつ作りこまれるのか、参考となるデータです。



カタツムリ退治の有効な手段とは?

クラックが多く内在するパネルを設置していませんか?

パネルメーカーの出荷検査基準はまちまちですが、太陽光発電建設ラッシュによるパネルの需給バランス、価格競争、大半を輸入パネルに頼る現状から、品質への優先度が低下しているのは事実だと思います。入荷してくる新品パネルは、生産工場出荷時点で発電出力テストされた合格品であり、外観上非常にきれいなので、そのまま搭載。すると、数か月後にスネイルトレイルを発見、その数は増えていく、といった事例が多く報告され始めました。

 

パネルは10 ~ 20 年保証されていますが、交換対象は定格出力の81% 以下となったパネルであり、運転を停止、点検し故障パネルを特定、配線を外し、出力をチェックし事実確認する、という労力は、新品パネルの購入コストをはるかに超えてしまいます。建設ラッシュの今、ともかくパネルを全数設置し、故障は稼働してからの保守点検で見つければよい、という考えは、運用後に多大な保守点検費用の発生、または出力減衰、ロスを容認したままの不安定運用につながりかねないのです。

スネイルトレイルパネルは交換対象か?

スネイルトレイルがあるパネルはメーカー交換してもらえるのでしょうか?出荷時には外観検査でも合格品でした。でも、ユーザーからは欠陥品に見える不気味な線、しかも稼働後半年もたたないのに、初期故障のにおいがします。このまま稼働するわけにはいかず、交渉の上メーカーが交換に応じた例もありますが、明確な交換対象項目とはなっていません。設置してからでは、運転停止、取外しなど手間がかかります。設置前にスネイルトレイルに発展しそうなEL 画像をもったパネルを見て、目をつぶって搭載する気になれるでしょうか?

スネイルトレイルによる出力低下の未然防止策は?

はんだ剥離や材料関連の故障が事前発見が難しいのに対し、セルクラックを内在しているパネルはEL 画像検査で発見できるので、その程度により管理ができるということです。理想的には、設置する前にEL 検査を行い、全パネルのクラック状況を把握し、搭載するパネルを選別することです。

検査装置は、倉庫や設置現場などでスクリーニング用EL 検査ができるよう最適化したアイテスのEL 画像検査装置を使います。パネル全面を撮像し小型ディスプレイでリアルタイムに表示、その場で合否判定ができます。

設置前検査の理想と現実

全数受入検査は現実的でしょうか?故障パネルの分布はメーカーや生産時期などでばらつきますが、ロット的な傾向があるようです。検査時間やコスト負担を含め、抜き取り検査でロット単位の合否判定をすることも有効です。また、誰が検査をするのでしょうか?クラックの程度でどのレベルまで容認できるか、交換対象レベルのミスマッチ、入れ替えによる施工の遅延、など、実施のための課題は多くあります。ただ、メーカーが周知しているEL 画像があれば、技術的判定や交換交渉などを実EL 画像データを介して行うことができます。

スネイルトレイルを排除する水際作戦

現場でEL 画像撮影ができるアイテスの新開発装置を入手すれば、クラックによる劣化の可能性があるパネルを水際で排除できます。たとえば、購入しているパネルの確認、設置前抜き取り検査や全数検査、購入品(メーカー)決定の際の点検手段、など検査方法はさまざまありますが、設置前検査に要する労力は、設置後に顕在化するスネイルトレイルを見つけ対応する労力と経済的損失に比べると、非常に価値のあるアクションだと考えます。

 

合格品を再検査するなんて、という意見もあるでしょうが、スネイルトレイルが増え始めた現状から、残念ながら設置を目の前にしている関連サプライヤーやユーザーは、自己防衛的に設置前検査をせざるを得ない状況になりつつあるのも事実です。設置前検査は必須というつもりはなく、クラックフリーパネルが実現するまでの暫定措置であってほしいのですが、ここ数年は一つの有効な予防措置ということができるでしょう。 

クラックフリーパネル実現のため源流にさかのぼる

報告が増加しているスネイルトレイルへの対応、そのゴールは、出力低下に至らしめるクラックのないパネルを生産、出荷することだと思います。製造側からは、クラックのあるセルを徹底排除したパネルのみを出荷、また生産品を層別しグレードを付けてそれぞれの対価で販売する対応をしているところもあります。ユーザーの多くが国産品を好むようですが、現状大多数が輸入品に頼らざるを得ない状況です。

 

ただ、下流では劣化が早いであろうパネルを知らずに搭載して、スネイルトレイルでその現実を知る、設置後の対応には多大な経費が掛かる、という実情があります。まず、設置直前に現場のEL 検査で現状を把握し、問題のないことを確認します。クラックを発見したら、その程度から判断し、入手先と対応を協議しましょう。輸入であれば仲介会社へ、さらに製造メーカーへ、とさかのぼって源流でのクラック管理を実現することだと思います。そのためにも、現場での多くの事例を提示する必要があるでしょう。

 

共通の技術言語は、EL 画像になります。アイテスは、それを主導する権利はありませんが、スネイルトレイルを減少させ発電品質を向上させるための現場対応EL 検査装置の提供と、スネイルトレイルの発生メカニズムを解明し、有効な対応方法を提案できる解析評価活動で支援して行くつもりです。

アイテス太陽電池総合ソリューション

アイテスの太陽電池評価検査テクノロジーは、開発生産においては、断面解析からパネル製品評価検査まで、また太陽電池出荷後の設置現場においては、設置前検査から竣工検査、稼働後の保守点検に至るまで、すべてのフェーズにおいてあらたな検査手法で総合ソリューションを提供しています。今回テーマにしているクラック起因のスネイルトレイルは、設置が加速している関連業界共通の関心事となっています。これを排除するスクリーニングを設置前に行う設置前パネル検査は、業界実質標準であるアイテスのイメージング技術を設置現場に展開するあらたな試みであり、設置後の故障低減に寄与することを目指しています。さらに、STEP-1 故障系統検出、STEP-2 故障パネル特定、など保守点検につながるアイテスのソリューションサークルが、安定した太陽光発電運用をささえる有効なツールでありたい、と考えています。

おわりに

アイテスは、2014 年をスネイルトレイル元年と考えています。設置後はっきりと目視できる劣化パネルを放置せず、設置前の排除を提案します。まずは現場での現状把握し実態を解明、その管理を源流に持っていけるよう啓蒙が必要です。この追加作業を誰が負担するのか、など課題は多いですが、クラック入りのパネルは出力低下の原因となる、クラックはEL 検査で事前にわかる、設置前検査で排除できる、ことで、安定したソーラー運用が可能になる、と考えています。

 

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