Solamente-iSで点検中のお客様から、「2枚目のパネルからうまく点検ができなくなる」との連絡がありました。コンパクトな構成(全16枚)のソーラーパネル設備で検証してみると、今まで経験したことがない不可解な現象に遭遇しました。日照があるのに、発電していないようなのです。
Solamenteは正常動作していますが、点検時の無意識な影が原因でした。
2枚目からセンサーの反応がおかしくなる

ソーラパネル点検装置「Solamente-iS」はパネル表面にあてるだけで、パネルバスバーの発電電流を感知する直観的な点検ツールです。
現場は4x4=12枚のパネルがほぼフラット(10度)に配置されていました。横向バスバーなので上から下へスキャンして、Solamenteは正常に反応しました。センサー角度を90度変えて点検してみると、2枚目のパネルでSolamenteが反応しなくなったり、不安定な状態になりました。
点検しているパネルには全面に日照があり、十分に発電しているはずですが反応がない。横にスキャンするので少し背伸び姿勢となり、直近にあるパネルのほとんどに点検者の影がかぶっていました。
影がなくても発電しない状態に
モジュール(太陽光パネル)は3つのクラスタ(複数のセルを直列に結線したグループ)で構成されています。点検中にクラスタの一部セルが影になると直列回路が断たれ、そのクラスタは発電しないため、バイパスダイオードで迂回(バイパス)されます。したがって、点検中のパネルには影をつくらないようガイドしてきました。ところが、今回は点検しているパネルには影をつくっていないのに、時々発電しないような状態になったのです。


これは、パネルではなくストリング系統の問題でした。
ストリング出力の約20%以上を失うとストリングの全パネルが発電しなくなります。パワコンはPmaxで運転しますが、点検していないパネルが無意識な影で発電しなくなると、ストリング電圧は低下します。
ストリング電圧が約80%以下の値になると、他ストリングからの発電電流が逆流します。これを避けるため、接続箱の逆流防止(ブロッキング)ダイオードが働き、そのストリングの発電は停止します。今回は4パネル/ストリング構成なので、1パネルで25%の電圧低下となり、ストリング全体が発電しなくなったのです。
点検中のパネルに影をつくらないのは大原則ですが、点検していないパネルを非発電状態にするとそのストリングの電圧降下が起きる、ことを再認識しました。パネル数が少ないストリング構成のものは、特に3クラスタを寸断しパネルの発電ができないような影をつくらないよう配慮が必要です。
点検パネルだけではなく、全体の回路構成を頭に入れた点検を行いましょう。
ストリングが不明なシステムでは、接続箱の開閉器をストリング単位でオフし、Solamenteで発電していないパネルを探し当てれば、簡単に実際のストリング回路構成(ストリングマップ)を把握することができます。
現場での実証実験にご協力いただきました松原電機様に、この場をお借りしてお礼を申し上げます。