ストリング内太陽光パネルの逆接続の調査

ストリング内太陽光パネルの逆接続の調査

「太陽光パネルを取り付ける際に、PVケーブルのP、Nを逆に接続してしまった場合はどのような問題が発生するのか?」について、実際の現場での調査からご報告します。

その現場は、台風の風圧で太陽光パネルが飛散し、PVケーブルもちぎれる被害を受けました。復旧工事で太陽光パネルを取り付ける際に、作業ミスでうち1枚だけPVケーブルのPNを逆に接続してしまいました。

逆に接続したことに気付かず、「他と比べて開放電圧が低いことは分かるが、その理由が分からない」状態の現場にアイテスが行き、調査いたしました。

仮説

まず、開放電圧について考えます。

正常なストリングの接続
図1 正常に接続されたストリング

太陽光パネル1枚の開放電圧が43Vであったなら、図1のように16直の正常に接続されたストリングは、43V×16=688Vとなります。

1枚少ないストリングの接続
図2 1枚少ないストリング

次に、図2のように1枚少ない15直のストリングでは、43V×15=645Vとなります。

図3 逆接続されたストリング

それでは、図3のように1枚のPVケーブルをPN逆に接続した場合は、どうなるのでしょうか?

43V×15-43V=602Vとなるのではないかと、仮説を立てました。

検証

そこで実際の現場で、IVカーブトレーサーを使って、太陽光パネルの開放電圧を測定してみました。

正常ストリングと異常ストリングのI-Vカーブ
正常に接続されたストリングと逆接続されたストリングのIVカーブ
正常に接続されたストリング(赤)
逆接続されたストリング(青)
Pmax[W]
1251.21
1091.43
Vpm[V]
584.13
499.97
Ipm[A]
2.142
2.183
Voc[V]
687.37
601.47
Isc[A]
2.351
2.385
F.F.
0.774
0.761

表1

測定の結果は、表1に示しました。正常なストリングが687.37V、逆接続したストリングが601.47Vとなり、仮説で計算した通りの結果となりました。

しかし、「故障したパネルがあるから、逆接続されたストリングの電圧が低くなっているのでは?」という疑いもあります。

そこで、ソラメンテを使って、逆接続されたストリングの故障を特定することにしました。

故障モードの判別表
図4 ソラメンテの故障モード判別表

まず、ソラメンテ-Zで開放電圧を測定しました。測定した開放電圧は、IVカーブトレーサーの測定結果と同様に低下し、インピーダンスは低い値となりました。ソラメンテ-Zの測定結果を判別表(図4)と照合すると、バイパスダイオードショート故障の疑いが考えられます。そこで、ストリングを開放状態にして、ソラメンテ-iSで故障パネルの特定を行いました。

ところが、すべてのパネルでソラメンテ-iSの反応はなく、バイパスダイオードショート故障はしていないという結果になりました。

逆接続したストリングの電流の流れ
図5 CiSアダプターを使って確認した電流の流れ

そこで、通電状態に戻し、電路の発電電流の向きを検出できるCiSアダプターを取り付けたソラメンテ-iSで、電流の向きを確認しました。

その結果、逆接続された太陽光パネルでは、電流が逆流していることが確認できました(図5)。

逆接続したパネルのバイパスダイオードは?

ここで、一つの疑問が生じます。「電流が逆流しているパネルにおいては、バイパスダイオードに電流は迂回しないのか?」ということです。

図7 正常パネルのI-V
図6 正常に接続されたパネルのIVカーブ
図8 正常パネルを完全遮光したI-V
図7 正常に接続されたパネルを完全遮光したIVカーブ

このことを、IVカーブの観点から考察してみました。

正常に接続されたパネルのIVカーブは図6のようになります。それでは、正常に接続されたパネルで、バイパスダイオードに電流が迂回するのはどのような場合でしょうか?パネル全面に影がかかった状態と考えられます。

ストリング全体の電流が2Aとすると、影の掛かったパネルのIVは、図7のようになると推測します。電流が2Aの時の動作点は第二象限にあり、バイパスダイオードに電流が迂回することを示しています。

図9 逆接続パネルのIV
図8 逆接続されたパネルのIVカーブ
図10 逆接続パネルを完全遮光したIV
図9 逆接続されたパネルを完全に遮光した場合のIVカーブ

次に、逆接続された太陽光パネルのIVカーブ測定を考えると、図8のようになります。

このIVカーブで考えると、電流が逆流していることと、ストリングは単一の直列接続であるから、該当パネルのセル観点では-2Aであり、第四象限にあること推測します。

そして、逆接続されたパネル全面を完全に遮光して、影が掛かった状態のIVカーブを考えると、図9のように推測します。

第二象限で動作しないことが明らかです。すなわち、バイパスダイオード側に電流が流れることは考えられないのです。

パネルの発熱を確認

サーモカメラ写真
写真1 サーモカメラ写真

さて、前項で「逆接続されている太陽光パネルは、発電状態においてセル回路のみに電流が流れる」と推測しましたが、この電流は売電に寄与できず、セル回路内で、消費されることになります。

消費されるということは、ジュール熱で観測できるはずです。そこでサーモカメラによって、ストリング内の正常に接続されたパネルと、逆接続されたパネルとの温度分布を観察しました。

正常に接続されたパネルと逆接続されたパネルを比べると、逆接続されたパネルは発熱していることを確認しました(写真1)。

まとめ

作業ミスによりPN逆接続されたパネルは、セル側回路を逆向きに電流が流れることで発熱するということが分かります。

このような作業ミスは建設工事だけでなく、災害復旧でも起こる可能性があります。竣工検査や復旧時の運転再開前の検査では、しっかりとした電気検査を行うことが重要です。

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