太陽電池モジュールは数十枚のセルを電気的に直列に接続した構造となっています。1か所でもカゲ・故障があると太陽電池ストリングの発電力が止まってしまうことを避けるために、各所にBPD(バイパスダイオード)が存在しています。
太陽電池モジュールはいわゆるクラスタ構造になっており、太陽光発電所に設置されている太陽電池モジュールはクラスタ単位で発電しています。そのため、カゲ・故障等が発生すると発電力はクラスタ単位で低下することになります。一般的な太陽電池モジュールは3クラスタで構成されているため、3分の1単位で発電力が低下していきます。
ここで、14直の太陽電池モジュールで構成されるストリングを考えてみましょう。
太陽電池モジュールが3クラスタで構成されていると、1ストリング当たり42クラスタ(3クラスタ×14枚)になります。そのストリングにおける1クラスタは1/42=2.38% の発電を行っているはずです。2クラスタが故障すれば発電力は4.76%の低下となります。
発電力が低下すると、どれくらいの損失になるかを実験
ところで、比較的規模の大きい発電所(数百kW以上)では、数ストリング~十数ストリングが接続箱で電気的に束ねられてPCSへとつながっています。この場合、1クラスタの発電力低下はどの程度の損失になるのか、アイテスで実験を行いました。この発電所は以下のような構成になっています。
- 1ストリングは14個の太陽電池モジュールを直列に接続されている。
- 接続箱にて10ストリングを束ね、集電箱へ接続されている。
- 集電箱では接続箱3個分を束ね、集中型のPCSへ接続されている。
この構成では、14直のモジュール(1ストリング)を30ストリング束ねてPCSがMPPT制御(発電力が最大となるように制御すること)を行うので、全てのストリングの動作電圧は等しいことになります。そのためストリングの電流差を観測することで、クラスタ故障がどれだけの発電力低下になるかが分かるのです。
動作電流[A] | 発電力 | ||
---|---|---|---|
カゲにしたクラスタの数 | 実験ストリング | 参考ストリング | |
0 | 6.2 | 6.2 | 100% |
1 | 6 | 6.3 | 95.24% |
2 | 5.8 | 6.3 | 92.06% |
3 | 5.4 | 6.3 | 85.71% |
4 | 4.9 | 6.3 | 77.78% |
5 | 4.1 | 6.3 | 65.08% |
6 | 3.4 | 6.3 | 53.97% |
7 | 2.3 | 6.3 | 36.51% |
8 | 1.3 | 6.3 | 20.63% |
9 | 0.16 | 6.2 | 2.58% |
10 | 0.12 | 6.2 | 1.94% |
表1
この実験では、クラスタ単位にカゲをつくって発電力低下の状態を観察しましたが、クラスタ故障でも同様の結果が得られるはずです。また、実験の途中で外的要因(例えば雲がよぎったなど)が発生していないことを示すために、実験対象のストリングの隣のストリング(参考ストリング)を同時に観察しています。結果は表1の通りです。
実験を行っている間、参考ストリングの電流値はほぼ同じでしたので外的要因はほぼなかったと考えられます。表1から以下のことが読み取れます。
- 42クラスタ中、1クラスタの故障は5%の発電力低下となる。
- 42クラスタ中、6クラスタが故障すると、発電力は実質的に半分程度になる。
- 42クラスタ中、9クラスタが故障すると、そのストリングは発電に寄与しなくなる。
なぜ、発電に寄与しなくなるのか
なぜ、42クラスタ中9クラスタが故障すると、そのストリングは発電に寄与しなくなるのでしょうか。
太陽電池の電気的特性として電力最大(Pmax)における動作電圧は開放電圧のほぼ80%になります。つまりストリングの20%に相当するクラスタが故障すると、PCSが制御する動作電圧まで達しないのです。仮に14直の太陽電池ストリングであれば、42クラスタであり、その20%(42×20%=8.4)である9クラスタが故障すると発電に寄与できなくなってしまうのです。
このように1クラスタの故障は意外に大きな発電力低下につながってしまいます。定期的な点検でクラスタ故障を早期発見することにより、売電収入の低下を最小限にできます。