現在、業界ではさまざまな太陽光パネルの点検機器が市販されています。
太陽光パネルを健全な状態に保ち、発電量の維持を行うには、それぞれの点検機器の目的と特徴を理解したうえで使用することが重要です。
現在市販されている、主要な点検機器の目的と特徴を整理して紹介します。(2017年4月)
色々ある太陽光パネルの点検方法
1.保安点検(接地抵抗計、絶縁抵抗計)
接地抵抗、絶縁抵抗の測定は、漏電の有無、接地確認など保安を目的としている。太陽光発電に特化した測定ではなく、太陽光パネルの発電性能を点検するものではない。
2.汎用テスター、クランプ電流計
パネル点検に使用される場合は、発電中のPVケーブルにおけるストリング発電電流測定、接続箱でのストリングの開放電圧、パネル単位の開放電圧の測定に使用される。何れも測定結果は天候の影響を大きく受ける。
3.IV測定
接続箱の開閉器のストリング毎、あるいはパネル毎のIVカーブを測定する。測定時の発電電力と諸特性が詳細に得られる。測定結果は天候の影響を大きく受ける。
日射量が700W/m2以上で測定することが推奨されていることや、測定結果から良否判断を行うには専門知識と熟練が求められる。大量のパネルの中から故障パネルの場所を探索するような使用方法には向かない。故障パネル特定後の定量的なエビデンスデータの記録等に適している。
4.サーモカメラ
非接触でパネルや周辺物の表面温度の差異を目視するものである。
ホットスポットの画像化により、大まかな故障パネルの絞り込みに使われることが多い。最近はドローンに搭載し、メガソーラーを空撮する点検も行われている。
ただし、天候の影響、気温の影響を受けやすいこと、影と故障両方の原因で発熱すること、必ずしも発熱が発電低下に影響していない場合も多くある。サーモカメラで故障パネルを正確に特定することは難しく、画像の目視による点検者の判断力量にも大きく依存する。
5. EL検査
EL(Electro Luminescence)検査は太陽電池メーカーのパネル製造工程で、セルの割れ(クラック)の有無を検出するのが目的である。
最近、発電所の現場でEL検査を実施することも試みられているが、得られる情報はクラックの有無であり、出力性能に大きく影響するものではない。したがって、EL検査結果でパネルメーカーとの出力保証を対象とした無償交換の交渉は難しい。
発電所現場での用途としては、設置前パネルの受け入れ検査や、抜き取り検査に適している。
6.遠隔監視
パワコンの出力、接続箱にクランプ電流計等のセンサーを設置し、その測定結果をインターネットでリモート監視する方法。
発電所に行かずにパワコンの動作状態、発電量、ストリングの電流値などの情報が得られる。日常の発電量の監視、自然災害後の1次点検などに適している。
得られる情報は、あくまでパワコンが制御している状態での情報であり、かつ天候の影響を大きく受ける情報であることから、故障パネルと正常パネルの正確な識別は難しい。
7.ストリングチェッカー
ストリング毎に開閉器を開放してパワコンを切り離し、ストリングのP-N端子からインピーダンスと開放電圧を測定する。この手法により、効率よくストリング内のクラスタ故障パネルの有無を判定することができる。
IV測定や温度測定など他の手法は天候の影響を大きく受けるが、インピーダンス測定は天候の影響を分離して良否判断が容易にできる。アイテスのストリングチェッカー「ソラメンテ-Z」はこの測定手法を採用している。
8.パネルチェッカー
インピーダンス測定により特定した故障ストリングから、その原因となっているパネルを特定する点検手法。
パネル表面の保護ガラス上からスティック付きの磁気センサーで、インターコネクタを横切るようにスキャンする。発電所が稼動状態のまま点検でき、送電停止してケーブルを外したりすることなくパネルのクラスタ電流の有無を検知できる。アイテスのパネルチェッカー「ソラメンテ-iS」はこの測定手法を採用している。