「目に見えてわかる!太陽電池」

目に見えてわかる!太陽電池

本物のセル(発電素子)を電線でつなぎ、灯光器の光を照らすと発電を始めました。この手作りモデルで分かった不思議と納得が交叉する現実の世界をご紹介します。

はじめに

太陽電池が正常に発電しているとき、一方、故障しているとき、ソラメンテはどのように反応するのか?をお客様にご説明したく、故障のシミュレーションができる太陽電池の模型を製作、今年2月のPVEXPO2015で展示しました。

弊社ブースで実際にご覧になった方もいらっしゃると思いますが、まだご存じない方も多いと思います。今月号から数回に分けてその模型についてと、故障をシミュレーションした様子を「目に見える」ようにご説明したいと思います。

目に見えて分かる太陽電池モデル

どんな模型?

図1 2つのクラスタ回路を形成(黄色の部分)
図1 2つのクラスタ回路を形成(黄色の部分)
図2 目に見えて分かる太陽電池モデル
図2 目に見えて分かる太陽電池モデル

結晶型太陽電池では、一般的に1枚のソーラーパネルが3つのクラスタで構成されています(図1)。また、この例では、それぞれのクラスタは20枚のセルから成っています。このソーラーパネルから、2つのクラスタを、そしてそれぞれのクラスタから3枚のセルを取り出した模型を製作しました。(図2)

この模型を600Wの光源で照らすと、Vocが3V 程度、Iscが0.7A 程度の発電ができました。

太陽電池を構成する要素(セル、バイパスダイオード)はそれぞれターミナルに接続されていて、ターミナル間を開放したり、短絡させたりすることによって、「クラスタ断線」や「バイパスダイオードショート」などの故障をシミュレートすることができます。

正常に発電しているとき、影がかかったとき

図3
図3
図3
図3
図3

梅雨の合間の晴れの日に、模型のソーラーパネルを屋外に持ち出し実験をしました。負荷をつなぎ、光を当てると発電が始まります。負荷として、抵抗値が約7Ωのニクロム線を使いました。0Ω~7Ωの範囲で抵抗値を変えることができます。実際の発電所または屋根の上の発電設備では、パワコンに相当するところですね。

今回は晴天の屋外という好条件で、約4Ωの負荷で、約2.7V・0.7Aの出力を得ることができました。(図3)

図4
図4

電流が流れていることは、ソラメンテ-iSでも確認することができます。(図4)

どのように電流が流れているかを模型上に印しました。(図5)

図5
図5
図6
図6

では、片方のクラスタに影がかかったらどうなるでしょう?

左側のクラスタの1枚のセルを覆うと、ソラメンテiSの反応がなくなり、インターコネクタには電流が流れなくなったことがわかります。(図6)

しかし、ソーラーパネル全体で見ると、全く発電できなくなる訳ではなく、出力は落ちるものの発電は続いています。 約4Ωの負荷で、約0.8V・0.2Aの出力になりました。(*1)(図7)

*1 出力低下の補足
発電していないセルは、単なるダイオードであり、発電電流は逆バイアス(NP方向)となるため、高抵抗となり、1クラスター分の発電を失う。この模型では、出力電圧、電流とも低下したが、本物のPCSであれば、出力電圧のみ低下します。

図7
図7
図8
図8

これは、発電しなくなったクラスタを迂回して電流を流すための「バイパスダイオード」が予め取り付けられているからなのです。

バイパスダイオードを通って電流がながれる様子を模型上に印しました。(図8)

故障シミュレーション‐1 クラスタ断線

図9
図9

故障シミュレーション第1回目は、「クラスタ断線」故障です。

結晶系ソーラーパネルには約300カ所のハンダ接合部が存在します。これらの接合部のハンダにクラックが入ると断線の原因になり得ます。(図9)

図10-1
図10-1
図10-2
図10-2

クラスタ断線があると開放電圧が低下するという現象が現れます。先ず、正常な状態の開放電圧を測定します。今回は、約3.3Vでした。(図10-1、10-2)

図11-1
図11-1
図11-2
図11-2

では、右側のクラスタを断線させてみましょう。

模型では、セルとセルの間のジャンパーを取り外すことによって、インターコネクタを断線状態にすることができます。(図11-1、11-2)

図12-1
図12-1
図12-2
図12-2

それでは、この状態で開放電圧を測ってみます。測定結果は、約1.4Vでした。

電圧が約半分(1クラスタ分の電圧低下)になっていることがわかります。(図12-1、12-2)(*2)

*2:1クラスタ分の電圧低下に加えて、バイパスダイオードの電圧低下がある為1/2以下になっています。

故障シミュレーション‐2 バイパスダイオードショート

図13
図13

アイテスでは全国の発電所に赴き、ソラメンテを使ったソーラーパネル点検のデモをさせていただいておりますが、バイパスショートがショートしている事例にも遭遇しています。

バイパスダイオードがショートすると、開放電圧は下がりますが、ソラメンテZによる抵抗値の測定では特に異常は認められません。

では、模型を使って故障のシミュレーションをしてみましょう。

先ず、正常な状態での開放電圧を測定します。開放電圧(Voc)は、約3.2Vでした。(図13)

図14-1
図14-1
図14-2
図14-2

この状態で出力を短絡し電流(Isc)を測ってみると、約0.7Aでした。(図14-1,2)

図15-1
図15-1
図15-2
図15-2

また、ソラメンテを使ってインターコネクタを流れる電流を確認しました。両クラスタ共、インターコネクタに電流が流れていることがわかります。(図15-1,2)

では、右側クラスタのバイパスダイオードをショートさせてみましょう。

開放電圧(Voc)は、約1.6Vに低下しました。(図16)

では、右側クラスタのバイパスダイオードをショートさせてみましょう。

開放電圧(Voc)は、約1.6Vに低下しました。(図16)

図16
図16
図17-1 出力を開放にする(電流は流れない)
図17-1 出力を開放にする(電流は流れない)
図17-2 正常なクラスタのインターコネクタには電流が流れていない
図17-2 正常なクラスタのインターコネクタには電流が流れていない
図17-3 故障クラスタのインターコネクタには電流が流れる
図17-3 故障クラスタのインターコネクタには電流が流れる

バイパスダイオードがショートしているソーラーパネルは、出力を開放にした状態(接続箱のブレーカーをOFFにした状態)で、該当ストリングをソラメンテiSを使って点検することにより特定することができます。図5にその様子を紹介します。

ソラメンテiSを使った点検は、ストリングをパワコンに繋いだ状態(接続箱のブレーカーをONにした状態)で行いますが、バイパスダイオードショートの点検に限り、出力を開放にした状態で行います。出力開放にも関わらず、電流が流れるクラスタがあればバイパスダイオードショート故障が先ず疑われます。

尚、今回の実験は、ビルの日陰で行いました。直射日光でなくてもソラメンテが使える場面は多くあります。詳しくは、先月号のメルマガ(「ソラメンテ通信 」2015年7月号)の「営業レポート:曇り空でもソラメンテ!」をご参照ください。

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