安全な絶縁抵抗の測定方法は?

安全な絶縁抵抗の測定方法は?

高圧や特高のような大規模発電所に限らず、低圧や住宅に設置された太陽電池パネルも、電気事業法で定められた電気工作物に該当します。

したがって、感電や火災のような重大事故を未然に防ぐため、電圧区分により決められた頻度で絶縁抵抗測定を行う必要があります。

そこで今回は、太陽光発電設備のDC回路を、正確かつ安全に絶縁抵抗測定する方法について解説します。

絶縁抵抗測定とは?

図1 絶縁抵抗測定
図1 絶縁抵抗測定

絶縁抵抗測定は、絶縁抵抗計による測定が一般的です。ソラメンテでは、絶縁抵抗は測定できません。

絶縁性能の評価は、図1のように、対象とする電路の内部と外部(アース電極)間(黄色の⇔)に一定電圧を印加し、発生する電流値などから抵抗を算出し、絶縁性を評価します。

なぜ、絶縁抵抗を測定しなければならないのか?

太陽電池発電設備の電路を構成する部材はケーブル、コネクタ、太陽電池パネルなどがあります。それらは徐々に絶縁性が低下する恐れがあります。

例えば、小動物によるケーブル被覆の噛みつけや、塩害地域におけるコネクタの腐食や太陽電池パネルのシーリング部からの水分の浸入などにより、絶縁性が低下することが考えられます。このため、電気事業法(※1)やガイドライン(※2)で定期的に点検を行うことが定められています。

地絡発生
水分が侵入したパネル。地絡が発生している。

このチェックを怠ると絶縁状態が悪いことに気がつかず、最悪の場合に地絡が発生しパワコン(PCS)が停止する恐れがあります。

また、パワコン(PCS)が停止したとしても太陽電池は日光が当たる限り電源となるため、地絡発生箇所では感電の危険性が高い状態になっています。

※1 電気設備に関する技術基準を定める省令(第58条)
※2 太陽光発電システム保守点検ガイドライン(14.点検要件と方法)

ストリングの構成をおさらい

図2は、一般的な結晶系太陽電池パネルで構成されたストリングを示しています。運転状態のPCSに接続されたストリングは、発電電流が赤色矢印の方向に流れます。

一般的な結晶系太陽電池パネルで構成されたストリング
図2 一般的な結晶系太陽電池パネルで構成されたストリング

図内のSPDとは”Surge Protective Device”の略で雷による過電圧・過電流がPCSに浸入するのを防ぐための部品です。

それでは次に、太陽電池発電設備における絶縁抵抗測定について説明していきます。

太陽発電設備の絶縁抵抗測定の方法

図3 ストリングの絶縁抵抗測定
図3 ストリングの絶縁抵抗測定

ストリング内部の電路が露出している箇所は、図3のように接続箱の開閉器にある接続端子(P端子とN端子)があります。

まずは接続箱の開閉器をOFFにします。次に全てのストリングの断路器をOFFにします。測定経路にSPD(避雷器)がある場合は切り離してください。

まずはP端子側から測定を開始します。絶縁抵抗計のプローブをP端子とGNDにコンタクトし、絶縁抵抗測定を行います。絶縁劣化がなければ、次にN端子側を測定します(※3)。同様に全ストリングの測定を行います。

測定終了後はSPD(避雷器)をまず戻します。次にストリングの断路器をONに戻します。最後に接続箱の開閉器をONに戻して終了します。

※回路内に不良箇所があった場合、N端子側を測定するとBPDが逆極性になるため、故障を引き起こす場合がある。

正確で安全な絶縁抵抗を測定するには

この測定方法は、安全に絶縁抵抗を測定できるのですが、欠点があります。

太陽電池は日光が当たっていると常に発電しているので、回路の状態によっては発電中の太陽電池の影響を受けてしまいます。つまり、実際の絶縁抵抗状態とは違った測定結果になり、正確な測定ができていない可能性があるということです。

それでは地絡が発生している場合、抵抗値はどのように変化しているのでしょうか。

地絡が発生している場合のP端子の抵抗値

図4 ストリングのP端子からの絶縁抵抗測定

ストリングの一部に地絡が発生している場合、図4のようにP端子より測定すると、漏洩電流は絶縁抵抗計からの電流に太陽電池パネルの発電による電流が加算され抵抗値は下がります。

地絡が発生している場合のN端子の抵抗値

図5 ストリングのN端子より絶縁抵抗測定
図5 ストリングのN端子より絶縁抵抗測定

ストリングの一部に地絡が発生している場合、図5のようにN端子より測定すると、漏洩電流は絶縁抵抗計からの電流に太陽電池パネルの発電による電流が打ち消され抵抗値は上がります。

太陽電池の影響を受けず、安全に絶縁抵抗測定する

発電している太陽電池の影響を受けずに、測定する方法はあるのでしょうか。それは、

    1. 太陽電池パネルが発電していない、夜間に測定する。
    2. 発電中の測定時に、太陽電池ストリングを短絡させて測定する。

という方法です。1の夜間の測定は、夜間業務が難しいケースや作業性の悪さ、また別の危険(転倒など)も伴います。2の短絡させての測定は、アークが発生する危険があります。また短絡用の直流開閉器を設置するのは、非常に手間がかかります。

正確に測定できない可能性がある測定方法か、危険で手間のかかる方法かの判断は困るところです。では次に、そのどちらも回避できる、便利な機器をご紹介します。

日置電機製の絶縁抵抗計

それは、日置電機株式会社製の絶縁抵抗計(IR4053)です。こちらの機器に搭載されているPVΩのファンクションを使うと、発電中の太陽電池パネルの影響を受けずに、正確な絶縁抵抗を測定できます。

絶縁抵抗計から電圧を印加する前に電流、電圧を測定し、その後に電圧を印加した電流・電圧を測定するしくみです。これらの値から、かさね合わせの理を適用し、絶縁抵抗Rを求めています。詳しくは、メーカーの日置電機株式会社にお問い合わせ下さい。

絶縁抵抗測定は、太陽光発電設備を安全に稼働させるために法律で定められた測定項目です。決められた頻度で測定を行い、しっかりと記録を残しておきましょう。

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