最近、複数のお客様から次のような現象について、お問い合わせをいただいています。
「ソラメンテ-Zでストリングを測定したところ、OL(Out of Limit:クラスタ故障の可能性)が表示されました。その日はソラメンテ-iSを持っていなかったので、別の日に改めてiSを持参して故障パネルを特定しようとしたところ、故障パネルは見つかりませんでした。おかしいと思い、再度ソラメンテ-Zでストリングを測定したところ、OLは表示されず正常に戻っていました。これはどういう現象でしょうか」
一見すると、ソラメンテは信用に値しない機器と思われそうな話です。でも、実は「ドローンサーモでクラスタ故障を発見したのに、地上の電気点検では故障がなくなってしまった」など、ソラメンテ以外の機器で点検していても、起こる現象なのです。この謎の現象について、原因を解説いたします。
太陽電池パネルの構造をおさらい
原因を解説する前に、まず太陽電池パネルの構造について、簡単におさらいをしてみます。

一般的な結晶系太陽電池パネルは、太陽電池セルをインターコネクタで直列に内部配線して、強化ガラスやフレームなどで、強固にパッケージングした製品です。


パネル裏面のジャンクションボックスの中には、バイパスダイオードが入っています。そして、バイパス回路ごとに分割されたセルストリングとバイパス回路を「クラスタ」と呼びます。
ソラメンテ-Zの測定値は
太陽電池パネルの構造を理解したところで、次に移ります。
冒頭でソラメンテの話を出しましたので、測定器の一例としてソラメンテ-Zを使ってご説明いたします。

ソラメンテ-Zのインピーダンス測定(パネル内部抵抗測定)は、P極から信号を送信しN極へ戻ってくる信号波形の変化により直列抵抗を測定しています。

測定結果は太陽電池パネル内部の電極接合部(TAB間/ケーブル間)に高抵抗化/断線が発生していると、測定値(Ω:インピーダンス)は大きくなります。
消える故障の原因は
一方、太陽電池パネル内部の電極接合部の接点は、気温の変化による材料の膨張・収縮の影響で接合度合いが変化することがあります。

一例として、ジャンクションボックスから出ているPVケーブルとモジュール内部電極の接合部は、風の影響や人が触れることなどにより、物理的に接合度合いが変化することがあります。つまり、電極接合部がくっついたり離れたりするのです。
具体的な現象としては…
- ドローンサーモ点検でクラスタ故障を見つけたのに、地上の電気点検では異常が見つからない。
- PVケーブルが揺れると、正常⇔異常(断線・高抵抗化)に状態が変化する。
- ソラメンテ-Zで測定し、OLになった。数日後にソラメンテ-iSで確認しても、異常が見つからない。
このように電極接合部が不安定な状態であると、ソラメンテ-Zの測定結果も影響を受けていると考えられます。そのため、一度ソラメンテ-Zで測定した結果がOL表示となったストリングでも、後日再測定すると正常に戻る現象が発生します。
まとめ
点検結果が時間の経過によって変化する場合は、電極接合部の接触不良が考えられます。
このような状態の場合、パネルメーカーに故障として扱ってもらうのは難しく、状態を注視するしかないようです。