琵琶湖のほとりから
from 藤本 秀樹
皆さん、こんにちは。
アイテスの藤本です。
設計では開放電圧が500V出るはずなのに、490Vしか計測されないストリング。
これって正常だと思いますか?
天候の影響で電圧は変動するから問題ないんじゃない?そう思われている方は多いと思います。でもね、実はここに「クラスタ故障」が隠れているかもしれないんです。
そのクラスタ故障の代表格が「クラスタ断線」です。断線というと、ケーブルなどの断線をイメージされるかもしれません。
しかし、「クラスタ断線」は太陽光パネルの内部配線が切れてしまう故障のことを指します。いわゆるバスバーやインターコネクタと呼ばれているセル上の電極が切れてしまう故障ですね。
実はこのクラスタ断線、パネルの初期不良でも結構起こっているんです。
例えば竣工検査で、ストリング電圧が14直列、500Vが正常値だとしましょう。
これに対して490Vや485Vといった電圧が出た場合、誤差範囲内として「正常」と判断される事があります。
しかし、この10Vの差に「クラスタ断線」が隠れている場合があるのです!
使用されている太陽光パネルのVOC(開放電圧)が「38V」だった場合、これを晴天時の屋外で測ると恐らく「35V前後」になるはずです。
その場合、このパネルの1つのクラスタの電圧は「13V弱」になります。
前回のメルマガでご紹介しましたが、一般的な太陽光パネル(結晶系)は1枚のパネルの中に3つのバイパス回路があります。
このバイパス回路で区切られたセルの集合体が「クラスタ」です。
バイパス回路が三つなので、1つのクラスタの電圧も大体三分の一になるわけですね。
「クラスタ断線」が発生すると断線が発生しているクラスタのバイパス回路が動作し、そのクラスタを切り離してしまいます。
そして、クラスタの電圧分の約10V分がストリングの全体の電圧から低下してしまうわけです。
これがクラスタ断線による10V低下の原因です。
太陽光パネルの最小単位はセルです。
しかし、発電が行われる基本単位はクラスタであることは是非意識して下さい。
もちろん天候の変動で10V低下する場合もあります。なので、この10Vの差が故障なのか、天候(影)の影響なのかを判別する必要があります。
そこで有効なのが、インピーダンス測定になります。
天候や設置環境によって変わりますが、故障が発生していない場合、インピーダンスは10Ω前後で推移します。
それに対して、開放電圧がクラスタ断線によって低下している場合、内部抵抗値が100~1000Ωといった高い値になります。
天候や影の影響で電圧が下がっている場合は、時間帯を変えて測定すると正常値に戻ります。
例外もあるのですが、これについては次の機会にお話しいたしますね。
それでは皆さん、またお会いしましょう。ありがとうございました。
太陽光パネルに異常に詳しい会社
株式会社アイテス 藤本秀樹
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