発電出力の低下に直結する太陽光パネルのクラスタ故障。この電流配線路の導通不具合の故障には3種類ありますが、なかでも従来の点検方法で特定することが難しい故障、がクラスタの高抵抗化です。
この見逃しやすい高抵抗化クラスタ故障を現場の事例を交えて解説します。(2017年5月)
クラスタ故障はいつ起きるのか?
ソーラーパネルの故障の種類はさまざまです。図1.はソーラーパネルの故障モードと経過年月の関係を表しています。
ソーラーパネルの故障には発生時期観点では下記3種類のフェーズの故障があります。
- 初期不良・・・早期に出力低下を伴う故障:物理的なダメージや製造工程での不良によるものがあげられる
- 中期不良・・・中期の故障として、稼動時間に応じて症状が進行していく故障がある
- 老朽化による不良・・・保証期間を越えて使用寿命となる長期の故障(自然劣化)
発電量維持のためには、メーカーの保証条件を満たさない故障パネルを特定し、速やかに交換することが重要となります。現場では実際に初期、中期にこのような故障が発生しており、これらの故障モードをクラスタ故障と呼びます(図2.)。いずれもパネルの製品保証期間内でも発生している現状があります。
クラスタ故障の種類
- クラスタ断線:インターコネクタの接続不良、ハンダ外れ、ハンダクラック、ジャンクションボックス内の接続不良が主な原因である。
- クラスタ高抵抗化:上記のクラスタ断線に至るまでの過渡的な状態で発生することが多い。インターコネクタとセルの電極の接合不良により接合部の接触面積が小さくなることで接触抵抗が大きくなり、電流が流れにくい状況を引き起こす。
- バイパスダイオード短絡:主には被雷(直撃雷、誘導雷)により、バイパスダイオードが短絡状態となる。クラスタの発電電流が迂回回路を逆流してしまう。経年劣化でも起こる。
クラスタ故障についてはアイテスが無料で配布しているメンテブックに詳しく掲載しています。
ハンダ接合部不良を見てみると?
図3.は、アイテスでの冷熱衝撃サイクルによる加速試験により発生したモジュール内部配線の顕微鏡写真です。ハンダ接合部でクラックが発生していることがわかります。
インターコネクタとセルの電極の接合不良により接触面積が小さくなることで接触抵抗が大きくなり、電流が流れにくい状況を引き起こしている高抵抗化の状態、ということがわかります。
このような高抵抗化の状態により発電電流がバイパスルートに迂回してしまうと、パネルの出力は1/3低下してしまいます。
高抵抗化クラスタの故障事例
大規模メガソーラーで潜在的に発生していた高抵抗化クラスタパネルをソラメンテ点検により特定した事例です。
点検事例:テスターでの開放電圧点検では見逃す高抵抗化パネル
- 発電所概要:10MW、野立て、産業用発電所、竣工後1年、天候は曇り
- 状況:ストリング遠隔監視をしているメガソーラー。監視システムでは異常通知がないが、現地点検で高抵抗化パネル故障が複数発生
- 本発電所は、現地点検はテスターの開放電圧点検を行っており、特に故障パネルは見つかっていなかった。
- アイテスがソラメンテで測定デモを実施。
結果
- ソラメンテ-Zで高抵抗化ストリングを複数検出。その後ソラメンテ-iSで高抵抗化パネルの位置を特定した。該当パネルの裏面を見ると、バックシートに焦げ跡が複数あった。
解説
高抵抗化ストリングは、バイパスダイオードに発電電流が迂回したり、クラスタに流れたり、日照状態でも変化するため、発電をロスする。
解説
高抵抗化パネルは、テスターでの開放電圧測定では、区別がつかない。しかし、連系中は発電電流は高抵抗化したクラスタを流れた際は発熱するため、保安面でも危険。ソラメンテ-Zでのインピーダンス測定は、このようなケースでも正確に検出ができ、見逃しを防止できる。