クランプメーターでストリングの点検をされている方も多いと思います。動作電流を測定することでストリングが動作状態にあるのかのチェックができます。
しかし、一方でストリング内にクラスタ故障パネルがあるかを正しく判断することは難しい場合があります。
本事例では、クラスタ故障の解説と、ソラメンテとクランプメーターでの点検結果を比較してみます。
そもそも、クラスタ故障とは?
クラスタ故障はどんな現象?
クラスタ故障が発生すると、本来のパネル1枚分の開放電圧に対してクラスタ単位で電圧が低下することがあります(クラスタ高抵抗化時では開放電圧は変化しません)。
例えば、パネル単体の開放電圧が30Vとすると、1クラスタ10Vずつ低下します。
太陽電池セルの構造
一般的に、結晶型セル1枚の開放電圧はおよそ0.6V、短絡電流は8Aです。
セルはインターコネクタにより直列に接続されています。セルは直列接続され、1枚のパネルとなり、パネルもまた直列接続されてストリングとなります。
このようにストリング内の太陽電池は直列接続されているため、必ずストリング内の電流は同じになります。 クランプメーターを使った点検は、これらストリング毎の電流値を比較することで異常判断を行っています。
しかしながら、実際にはパワコンが接続されているため、そうはいかないケースがあります。 それはパワコンのMPPT制御のためです。
パワコンのMPPT制御とは?
多くの産業用太陽光発電所は同じ方角、同じ角度でパネルを並べることでストリング単位のIVカーブ特性を揃えています。
揃えることによってパワコンのMPPT制御を一括で行い、全てのストリングの発電電力が最大になるようにしています(最近ではストリング毎にMPPT制御を行うマルチストリング型パワコンもあります)。
IVカーブでパワコンのMPPT制御を見てみると…
ある時刻で、正常なストリングのIVカーブが青色とします。
パワコンのMPPT制御によって、発電電力(I×V)が最大となるように動作電圧Vが決まります。
どのストリングも同じIVカーブ特性であるため、全てのストリングで最大発電電力が取れます。
クラスタ故障が発生した場合は
複数の正常なストリングのある中、1ストリングだけが異常なストリングであった場合を考えます。
ここで言う異常とは、同一のストリング内に複数のクラスタ断線が発生しているものとします。
クラスタ故障発生時のIVカーブ①
クラスタの断線が1箇所発生していると、開放電圧が1クラスタ分低下します。
Vocは電流値ゼロとなる開放電圧を示します。
緑色のIVカーブまでVocが低下したときを考えます。
クラスタ故障発生時のIVカーブ②
パワコンのMPPT制御によって、黄色点の動作電圧Vopが決められると緑色のIVカーブから電流Iが0[A]とわかります。
発電電力はI×Vであるので、緑色のストリングの発電電力は0[W]となります。
→このようにストリングのVocがMPPT制御による動作電圧Vopより低下した場合に、全て発電に寄与しないことになります。
領域Cでは電流量が小さくなります。
クランプメーターとソラメンテの測定比較事例
事例
ストリング
開放電圧 (ソラメンテ-Z)
インピーダンス (ソラメンテ-Z)
故障パネル枚数 (ソラメンテ-iS)
動作電流 (クランプメーター)
No.1
846
12
0
5.6
No.2 故障
789
1000
4
1.3
No.3 故障
831
1000
1
5.5
No.4
842
12
0
5.5
クラスタ故障とパワコンのMPPT制御をご理解いただいたところで、事例に移ります。上記のデータはクランプメーターにより点検していた方からお問合せがあり、ソラメンテによる点検をした事例になります。
ソラメンテ-Zによるストリングの点検後、ソラメンテ-iSでクラスタ故障パネルを特定しています。クランプメーターによるストリングの点検では、異常と判定できていなかったストリングでも異常を発見しています。