「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」第2版 改訂のポイント

「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」第2版 改訂のポイント

昨年12月27日、JEMA/JPEA(※.1)から「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」の最新版(※.2)(以降:ガイドライン第2版と表記する)が公開されました。本ガイドラインは、第1版が公開された2016年12月以来、FIT法(※.3)を始めとして,太陽光発電市場において、各種保守団体、点検事業者にとどまらず発電事業者、システム設計、施工・設置事業者に至るまで多くの市場関係者に参照され、保守点検の場で活用されてきました。

では、何故今、本ガイドラインが改訂、公開されたのでしょうか。

太陽光発電所は周知の通り、風力発電、バイオマス発電他とともに再生可能エネルギーとして、国の基幹エネルギーの一つとされています。2012年以前より実施されていた再エネの余剰電力の買取から、2012年のFIT法施行以降は発電全量の固定価格買取が行われているため、住宅用途に加え、10kW以上のいわゆる産業用途発電所の建設、普及が急速に進みました。それらの過程で、事業面の魅力から、様々な異業種、異業界から多くの事業者が新規参入した結果、設計、施工、使用部品・材料などの品質面について、玉石混交と言わざるを得ない発電所が林立しています。さらにはそれらの安定稼働にかかせない「保守・点検(O&M)」、「運営」についても、そのやり方、精度、実施状況に非常に大きなばらつきがあるのが現状です。そのような状況の中、近年は台風、地震、雷、などにとどまらず豪雨、暴風による災害が全国に亘り発生しています。これらの複合的な環境の中、屋根、地上設置合わせた太陽光発電システムは、その貢献の一方で、必然、偶然両面により倒壊、漏電、火災など看過できない事故、被害が発生し、一部の地域住民と事業者が訴訟で闘う状況も生まれました。

つまり太陽光発電システムが本格稼働して数年が経過した今、市場の実情に沿った、より安定かつ継続的な発電所運用が強く求められています。今回のガイドライン第2版では、これらの問題の事前防止、保守点検の安全、効率の改善のためのガイドとなるべく、最新の保守・点検の情報、ノウハウが加筆され、公開されました。

洪水
(※.4) 
住宅屋根の被災状況
(※.5) 

ガイドライン第2版では、主に以下5つのポイントの変更がありました。

  1. バイパス回路の点検方法の追記
  2. 地絡発生時の対応の追記
  3. 設置形態に合わせた定期点検要領表の見直し
  4. 測定方法の補足
  5. 注意喚起

本記事では、これらの内、パネル、ストリング、PVケーブルなど、発電の根幹にかかわる
1と4の改訂部分の点検についてご説明します。

バイパス回路の点検方法の追記

バイパス回路は、元来パネルに部分影がかかった際、直列接続されているストリングの発電電流が停止してしまわぬよう設けられている迂回路です。発電所のフィールドでは、影あるいはパネルの導通不良による頻繁かつ長期に亘るバイパス回路の動作、あるいは落雷等により、バイパス回路の短絡故障や開放故障が実際に発生しています。

2019年1月、消費者庁 消費者安全調査委員会から公示された調査報告書「住宅用太陽光発電システムから発生した火災事故等」においても、モジュールの発火原因の一つとしてバイパス回路の異常が分析、指摘され、経済産業大臣への意見として、その点検の必要性が報告されました。

バイパス回路の短絡故障は当該パネルの発電出力を低下させ、同一ストリング内に故障パネルが複数発生しますと、PCSのMPPT制御との兼ね合いから、条件によってはストリングに全く電流が流れない事態にもなり得ます。

開放故障は、影がかかったパネル又は高抵抗化した導通不良のクラスタに発電電流が流れるため発熱し、近傍に屋根材など可燃物が接触すると火災につながる危険性があります。
したがって、バイパス回路の点検による健全性維持は大変重要です。

ガイドライン第2版では、これらについて、容易かつ正確な最新の手法として、付属書B(P45以降)の定期点検表、解説5.5.6バイパス回路試験(p.113) 以降にてストリング単位の「バイパスダイオード故障判定装置」、パネル単位の「電路探査器」を追記詳述されています。

「バイパス回路点検」についてガイドライン追記頁 一覧

ガイドライン本文

13.4.3 バイパスダイオード試験(P.35)
13.4.3.1  オープン故障ダイオード試験(P.36)
13.4.3.2  ショート故障ダイオード試験(P.36)

付属書B 定期点検要領の例(P.45~P.70)

B.2.2 定期点検の実施要領例(P.46~)、表B.2-2 屋根設置のPVシステム、表B.2-3 地上設置のPVシステム 他

付属書D(規定) 点検要件と手法(P.72~)

D.2.4 ストリング-解放電圧測定(P.79)
D.3.4 バイパス回路の確認試験  a)、b) (P.87)

解説(P.94~)

5.5.6 バイパス回路試験
5.5.6.2 バイパスダイオードショート故障試験(バイパスダイオード短絡故障検出)(P.115)
5.5.7 インピーダンス測定試験(P.116~118)

ガイドラインP.115
ガイドライン第2版 抜粋(P115 5.5.6.2 バイパスダイードショート故障試験)

測定方法の補足

市場では、ストリングやパネル(モジュール)の「発電電流が流れにくくなり、出力が大きく低下する」不具合が経年浅くても多発しています。これらの主原因として、モジュール異常、PVケーブル異常、PVコネクタ異常が挙げられ、何れも発電電流の電路の高抵抗化、さらには断線に至ります。これら電路の異常は、従来の発電状態を見る測定手法(IV測定、クランプ電流測定、開放電圧測定、熱画像など)では、天候の影響で合否の判断がつかないことが非常に多く、現場の点検者の悩みの一つとなっています。

O&Mのコストの多くは人件費、点検時間が占めるため、点検に行ったら「天候・日照に左右されず容易かつ正確に合否判断できること、短時間で点検できること」が非常に重要です。

この観点からガイドライン第2版では、11.2 機器類検査及び安全に係る保守、11.3 発電性能に係る保守、の項に「インピーダンス測定」が新たに追記され、解説5.5.7にて詳細に測定試験手順が記載されました。

ガイドライン第2版内では、「電路探査」と組み合わせた手順も含め次頁の項目に点検方法が追記されています。

「インピーダンス測定」「電路探査」についてガイドライン追記頁 一覧

ガイドライン本文

11.2.3 太陽電池モジュール(P.20)
11.2.4  太陽電池コネクタ(P.21)
11.3.1  発電性能に係る保守(P.23)
11.3.4.2 ストリング電流確認(P.24)
12.4  発電性能に関する問題の診断(P.28 Cの5)

付属書D(規定)点検要件と手法(P.72~)

D.3.4 バイパス回路の確認試験 a)、b)(P.87)

解説(P.94~)

5.5.6 バイパス回路試験(P.113)
5.5.6.2 バイパスダイオードショート故障試験(バイパスダイオード短絡故障検出)(P.115)
5.5.7 インピーダンス測定試験(P.116~P.118)

ガイドライン第2版 抜粋(P116 5.5.7 インピーダンス測定試験)
ガイドライン第2版 抜粋(P116 5.5.7 インピーダンス測定試験)
インピーダンス測定回路の例
ガイドライン第2版 抜粋(P117,118 :5.5.7 インピーダンス測定試験)
ガイドライン第2版 抜粋(P117,118 :5.5.7 インピーダンス測定試験)

アイテスでは上記追加された「インピーダンス測定」、「電路探査」の手段として、ストリングチェッカー ソラメンテーZシリーズ、パネルチェッカー ソラメンテ-iSを提供するとともに、多くの実用手法、適用すべき不具合事例を知見として保有しています。IV測定やドローンを含めた熱観測等、他の点検とのクロスチェックにより、迅速かつ正確な点検ノウハウ情報を提供いたします。

※.1 JEMA:(一社)日本電機工業会、JPEA:(一社)太陽光発電協会
※.2 http://www.jpea.gr.jp/pdf/161228_pv_maintenance.pdf 
http://jema-net.or.jp/Japanese/res/solar/20191227.html 
※.3 電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法、固定価格買取制度
※.4 引用:読売オンライン 2018年 倉敷市
※.5 引用:平成31年1月28日 消費者安全調査委員会 調査報告書「住宅用太陽光発電システムから発生した火災事故等」

太陽光発電のメンテ需要は伸びる

  • 経年発電所のメンテ需要の増加予測
    • これからメンテナンスが伸びる理由
  • JPEA保守点検ガイドラインの改訂
    • 「インピーダンス測定」と「モジュール電路探査」が明記された

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