「バイパスダイオードショート」をご存知でしょうか?パネル出力の1/3を失うこの故障モードは、実は常時発電していながら、全体発電には寄与しない厄介な代物。昨今のパネルコストダウンからバイパスダイオードに多用され始めたショットキーダイオードに多く、しかも稼働開始後数か月で発生するといわれています。
故障原因を理解すれば、ソラメンテZで抵抗正常・電圧低下を示したストリングのパネルを、開閉器を開放(非発電状態)してソラメンテiSで発電電流をチェックすれば簡単に見つけることができます。また、ソラメンテ手法の得意技が一つ増えました。
聞きなれない、「バイパスダイオードショート」って、なにもの?
その言葉を初めて聞いたのは、2月のPV EXPO 2014の会場でした。
当社ブースを来訪された大手建設会社の方から、「バイパスダイオードショートしているとELでわかりますか?」と尋ねられました。最近、多くて困っている、とも言われていました。私も概念としては解っているつもりでしたが、5年この仕事をしていても、まだ現物を見たことがないので、そんなことあるのかな、と聞き流しておりました。
ところが、それから1カ月もしない間に遭遇したのです。ソラメンテユーザー様に、ソラメンテだからできる新たな保守点検手法をご紹介します。

初めてバイパスダイオードショートに遭遇
バイパスダイオードショートとは、ダイオードが発熱しショートする現象である。
実際の点検で、ソラメンテZを用いて各ストリングの抵抗と電圧を測定すると、当該ソーラーパネルがあるストリングでは、抵抗値は高くないが、電圧が1クラスター分(約10V)低くなる、という結果になります。
このストリングに故障パネルがあるとの判断で、ストリングの全パネルをソラメンテiSでチェックし、発電しないクラスタを発見しようとしますが、残念ながら全パネルで発電電流を感知しました。気を取り直して接続箱にもどり、ソラメンテZで再測定しますが、測定結果は再現性良く、やはりこのストリングだけ10V低い電圧値となります。
そこには、不可解な現象が存在していました。開閉器を開いているのに、あるパネルでソラメンテiSが反応したのです。発電していないはず、電気は流れていないはずなのに、不可解な現象です。
自家発電を続ける暴走状態

実は、バイパスダイオードショートしているパネルは、クラスタ内の回路が閉ループを作り、無条件に発電を続ける暴走状態となっていたのです。
この故障モードでは、非発電状態(開閉器を開放するか、パワコンをオフ)にします。そしてソラメンテiSで、流れるはずがない発電電流を確認すれば、容易に見つけることができることもわかりました。
壊れやすくなった?

バイパスダイオードショート故障パネルは、運転開始後、数か月程度で見つかることが多いです。まだ、下草も伸びていないくらいの現場です。運転前から壊れていたのか、どうかはわかりません。
また、一説には壊れやすくなった、とも言われています。バイパスダイオードの発熱を抑える目的で、VFが小さい種類のダイオードを使うようになりました。しかしながら、VFが小さい種類のダイオードの中でも、ショットキーバリアタイプを使うと、IRが大きいのです。そのため、バイパスルートでの電流迂回が切り替わったとき(例えば、影が移動し急に発電電流が流れたときなど)に、大きなIRが流れ、熱暴走する可能性が指摘されています。
SBD | PNダイオード | |
---|---|---|
順電圧 VF | 0.5~0.6V程度 | 1.0
V程度 |
順電流 IR | 数mA | 数µA |
耐圧 | 30~200V | 200~1200V |
出典:新電元 講演資料「太陽光発電システムの火災リスク対策における現状と課題」
ソラメンテの故障モード 特定方法
ソラメンテ点検手法は、クラスタ出力(パネル出力の1/3)が脱落する、代表的な3種の故障モードを簡単に判定します。
まず、接続箱からソラメンテZで全ストリングの出力電圧(開放電圧)と抵抗(インピーダンス)を測定し、不具合ストリングを検出します。
電圧値・抵抗値が表(赤字)のような結果となった場合、ストリング内の各パネルをソラメンテiSでチェックし、故障パネルを特定します。バイパスダイオードショートの場合は、非発電状態(開放)でチェックをします。
ソラメンテを使用した点検では、無償交換対象となるクラスタ系故障を迅速に見つけることが可能になります。結果として、出力回復に結び付ける、結果を出す点検、を容易に行うことができます。

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